長い農園の歴史は、その世代ごとにそれぞれの物語を生んできました。私たちは、先代の思いを受け継ぎつつ未来への思いを託したワインを、丹精込めて造っています。
パテリアナキス農園のぶどう栽培は、アリスティディス・ニコルダキスによって始められました。クレタ島ペザワイン産地地区にあるメレセスの丘陵地に、初めてぶとうの苗を植え付けた人物です。
1980年、エマヌイル・パテリアナキスは先代よりこのぶどう畑を引き継ぎました。先代から伝わる有機栽培を持続し、島内でその第一人者の一人となりました。
1990年、土木技師として順調なキャリアを歩んでいたヨルゴス・パテリアナキスは、55歳で建設業界を離れることを決意しました。長年の夢を叶えたい。それは、家族に受け継がれてきたワイン造りを続けることでした。膨大な資料を参考にしながらワイン産地への旅を重ねたのち、自らワイナリーを設計しました。自然素材を使い、重力活用のため6つの異なる高さのフロアを設けた、理想的な設計です。
1997年、当園初のオーガニックワインが完成。これはクレタ島で初めて生産されたオーガニックワインでもありました。「パテリアナキス農園」と「メリシノス ロゼ」は、同園で初めて販売を始めた2本のワインでした。際立ったワインとしての個性に加え、有機栽培されたぶどうから造られていることでも注目を集めました。同年、「パラディソス」の名前でオーガニックチクディアも醸造。数量限定で販売されました。
2000年、「メリシノス」シリーズに新たなボトルが加わりました。クレタ島固有品種のスラプサティリとフランス品種ソーヴィニヨン・ブランをブレンド白したワインと、フランス品種のシラーの赤ワインです。
2003年、ヨルゴス・パテリアナキスは施設をさらに拡大していきます。ペザのワイン産地が一望できるワイナリーの好立地条件を活かして、テイスティングホールを建設しました。醸造所に隣接するモダンな建物です。伝統とモダン感の二つを持ったはデザインは、テイスティングやイベントなどにふさわしいホールとなりました。
2008年には、ゲストハウスが4棟完成しました。ぶどう畑を臨める、伝統的なデザインの建物です畑の中のこの建物は、友人や訪問客、そして農園関係者をおもてなしする場所として建てられました。
2012年からは、ヨルゴス・パテリアナキスの二人の娘、エマヌエラとニキが四代目として農園を受け継いでいます。醸造学を学んだエマヌエラがワイン造りを、化学工学を学んだニキが販売を担当しています。
2014年、スピナマスカットが、島内で初めてワインとして登場しました。この品種はハニア県スピナ村に古くから伝わる品種で、文字通りマスカットを祖先にもちます。エマヌエラとニキも、この小粒の希少品種に期待をかけ、農園の一本として新たに加えることにしました。個性豊かな辛口の白ワインです。
2016年には、ギリシャを代表する有名な白ぶどう品種のひとつ、アシルティコの醸造を始めました。クレタ産のアシルティコは、島の風土が生み出す独自の個性を秘めています。
2018年、エマニュエラ・パテリアナキはクレタ島で初めてのナチュラルワイン「3,14」の販売を始めました。何度もの試験醸造の結果が実を結んだのです。白、ロゼ、赤の3タイプは、亜硫酸塩を添加せず、また醸造の際に醸造者の介入を極力抑えたナチュラルワインのシリーズです。ナチュラルワインの醸造は、大地の生態系が本来持つ力を生かし、自然なかたちでワインに仕上げるという、農園の理念を象徴した取り組みでした。
2019年、「パラディソス」の販売を再開。1997年に誕生した、パテリアナキス農園の有機栽培ぶどうを使用したチクディアです。島固有品種のコチファリとヴィディアノを原料に、二度の蒸留によって造られています。
スピナマスカット、ヴィディアノ、コチファリ、マルヴァズィアを約4ヘクタールの土地で栽培し始めました。厳選した品種を新たに加えることで、島に根ずく遺産とのつながりをさらに深めました。またぶどう畑を広げる事で、ワイン造りへのこだわりをより強くしました。土地の風土をありのままに表現するワイン造りのさらなる追求です。
2023年には、「アシルティコ・マグナム 2021」の販売を始めました。フレンチオークの新樽で1年間、さらにワイナリーのセラーで1年間、計2年間熟成させた数量限定品です。マグナムボトルのみで販売されるこのワインは、アシルティコならではのピュアさと繊細さ、そしてミネラル感あふれる個性があふれています。私たちが追求するものを表現している一本となりました
パテリアナキス家が有機栽培を始めたぶどう畑は、標高約500メートルにあります。オレガノ、セージ、タイム、ラベンダー、スイカズラなど、ミツバチが好むハーブや植物に囲まれた土地です。
クレタ島でもいち早く有機栽培に取り組んだエマヌイル・パテリアナキスは、この自然の美しさを守ることに取り組みました。有機栽培を選んだ理由のひとつは、ミツバチと養蜂の保護でした。当時、養蜂はこの地域の農家にとって重要な職業であったのです。
ミツバチは私たちに貴重な蜂蜜をも与えてくれるだけではありません。植物の受粉を助けるとで、世界の食料生産問題の解決のために一役買っているのです。同じ種類の花から花へ花粉が運ばれることで受粉が起こります。そして受精が行われ、果実や種子が生まれます。ミツバチのその営みと知性は驚くべきものです。それは社会全体のために力を合わせて働くことの大切さを、私たちに教え続けてくれています。ミツバチの世界とパテリアナキス家の醸造の伝統のなかには、目には見えないつながりが感じられます。こうして、農園のシンボルマークとしてミツバチを使うことになりました。